アセット・アプローチとはどのようなものですか?
国境を越える取引について、貿易取引よりも資本取引※のほうが多くなり、それが数倍にもなってきますと、購買力平価のような商品やサービス面からだけで外国為替の適正な交換レートを判断することは難しくなってきます。
このような背景から、購買力のようにある一定期間の取引高(フロー)からではなく、ある一時点の金融商品などの資産(アセット)残高(ストック)から外国為替の適正レートを考えるというアプローチが支持されるようになっていきました。これを「アセット・アプローチ」といいます。
※株式や債券などの金融商品取引のことです。
アセット・アプローチによる為替レートの算出方法は?
資本取引は貿易取引に比べて、短期的な移動が容易なので、投資家は国内外から予想収益率の高い金融資産を選択します。
例えば、アメリカの金融資産の予想収益率が5%、日本の金融資産の予想収益率が1%であるとします。
この場合、仮に為替レートが一定であれば、高いアメリカの金融資産を求めて、日本からどんどん流出していくことになります。つまり、ドル買い/円売りになるということです。
しかしながら、為替レートは一定ではなく、アメリカと日本の予想収益率が均衡するために、為替レートが予想収益率分だけ変化するというものです。
この例ですと、ドル円の為替レートが4%(5%−1%)下がる、すなわち元々1ドル=100円であったのであれば、4%分為替レートが変化し、1ドル=96円になるということです。
ただし、もし、予想収益率が均衡するように為替レートが変動するのであれば、すべての国の為替レートが予想収益率に収斂されていくはずですが、そもそも適正な予想収益率をどのように算出するのか、また、激しい為替レート変動、将来の為替レート予測の変化、金利の変動などを考慮しますと、アセット・アプローチによる適正な外国為替レートの算出というのは、非常に難しいといえます。
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